ボディの前方上側にはレンズキャップをとめるボタンがありその後方に絞りレバーがある。このレバーを動かしてfナンバーを4.5、6.3、9の3値に設定できる。絞レバーの後方には照準、つまりファインダーとして使用される金属枠がある。ボディ右側面にダイヤルがあり、これを90度回転することにより内臓のフィルターを着脱する。小窓に黄色い矢印が見ている時フィルターが装着されており、白い矢印はフィルターがはずされている状態を示す。感光剤に過剰に反応する青紫系の色をカットするため、一般に黄色のガラスフィルター(濾光器)が用いられていた。
シャッターはユニット化されていて、右側の長方形になった孔から本体内に挿入しネジで固定される。方式は縦に幕が走るフォーカルプレーン式で、シャッターのチャージは右にある歯車形状のダイヤルをくりくりと回し幕を上の軸に巻き取ることによって行われる。上に巻き上がってから、さらにまわすことにより先幕と後幕の間の隙間の長さが調製されこれがシャッター速度として小窓に標示される。チャージが終わったらHレバー(指桿)をつまんで引きながら前方に動かしてF孔に固定する。これでシャッター速度が決定され、後は右グリップを握ったときに人差し指で操作できるシャッターレバーを押し下げることによってリリースされ、スプリングの力によりシャッター幕が先幕、後幕の順に下の軸に巻き込まれ乾板(あるいはフイルム)への露光が完了する。
写真の出来にかかわる微妙な露光時間をコントロールする、精密さが要求されるシャッターユニットこそ、ドイツ職人の真骨頂であったに違いない。しかしいくらシャッターは精密でも、モータードライブはあろうはずもない。シャッターチャージから乾板の差し替え作業まで手動で行われ、その乾板倉には6枚の乾板した収納できなかったから、当時のカメラマンは機上でかなり忙しかったと思われる。乾板倉はスライド式の引き出しのような構造で、抜き差しする度に露光された乾板が次々に最後部に送られる仕組みになっていた。その抜き差し動作ひとつにしても、操作時はカメラを上向きにして露光済み乾板が後部に落ちやすくするように指示されており、ドイツ製とは言えども、完全な動作は誰も保障してくれないやっかいな精密機械だったことが想像される。
シャッターユニットの内部コーナー部に錘による傾斜角標示装置が二個あり、ひとつは光軸の水平に対する傾斜、もうひとつは光軸周りの傾斜角度を標示するためのもので、それぞれ乾板上に投影記録されるようになっている。 あとで出来上がった写真を分析するために、傾斜角の記録は必須であった。
。

二十五糎の主な仕様は
レンズ:250mmF4.5
シャッター速度:1/90,1/180,1/375,1/750
シャッター方式:フォーカルプレーン式
乾板又はフイルムのサイズ:13cmx18cm
製造:ツァイス・ネディンスコ
ちなみに250mmレンズは35mmフイルムに換算すると約50mm。つまり標準レンズ相当である。航空写真用レンズの場合、常に焦点距離は無限遠で使用するためフォーカスの調整機構はない。
ところでFKIのIはアルファベットのIではなく、ローマ数字で1を表す。同社製造のFKUと言う型があるがこれはFKIよりも大きく、50cmのレンズを備え、主に気球での観測用に使われた。