自転車を置いてカメラを肩に下げ、雨に濡れた細い坂道を下って行った。滑って転ばなようにゆっくり歩を進めると、近くに寄れずいつも遠くの方から眺めていたスーパースター、ヤマシギが足元から数メートルのところで、待ち伏せるように迎えてくれた。ファインダーからはみ出るような近さだった。それは寡黙で不器用でシャイなヤマシギにとって精一杯のファンサービスだった。ひとことも言葉をかわしたことはないけれど、長い付き合いだから、これくらいの事はあっても良いかなと思った。でもそれはほんの束の間で、おしゃべりで器用で厚かましいコジュケイの団体が近くにやって来て騒がしくなると、ヤマは悲しみのない自由な空へ飛び去って行った。
23/2/25 7:18 OM SYSTEM OM-1, M.ZUIKO ED 300mm F4.0 IS PRO with MC-14, f5.6 1/60 ISO2500