気象庁からの情報によって、アメリカ東海岸のキティホークの風が飛行実験に最適であることを発見した。しかも人里はなれた辺鄙な海岸は彼らの秘密実験には「おあつらえ向き」だった。ライト兄弟がグライダー実験のため初めてこの地を訪れたのは1900年。それから三年。ついにエンジン動力による飛行機を完成し、ライト兄弟がここに戻ってきたのは1903年9月23日のことだった。キャンプ用の小屋は風雨で半壊していたため、ワークショップ用の小屋とマシンを2台分(前年置いていったグライダーと新しい飛行機)格納できる小屋を新造した。彼らはまずグライダーを使用して操縦の練習を行った。一方ニューマシン(フライヤー)の組み立て、エンジンテストを行う段になって、プロペラシャフトが折れたり、ねじの加工ミスなどが発見された。一時オービルが部品調達のためデイトンに戻らなければならない事態となり、スケジュールは大幅に遅れていた。11月上旬に初飛行を予定していたが、最初の飛行は12月14日になった。その日、ほとんど無風状態で、キルデビルヒルの丘の斜面を利用して行われた一回目のトライアルは失敗。二人は機体を修復して次の飛行チャンスに備えた。