ライト兄弟が世界で初めての動力飛行に成功したのは1903年の12月17日ですが、キティホークの海岸で実験を開始したのは1900年の事です。全てはウィルバー・ライトのキティホークへの旅からはじまります。何をやるにも兄のウィルバー方が先でした。
ノースカロライナ州キティホークと言うところは1900年当時非常に辺鄙(へんぴ)なところでした。気象台に問い合わせてここがもっともグライダー実験に適した風が吹く土地であることを知ったウィルバー・ライトは、さっそく完成したグライダー第1号機を分解し箱詰めして、貨物で送ると同時に自らこの冒険の旅に出発したのであります。翼の桁に使う長い木材は運ぶのが難しいので、旅の途中のノーフォークで調達しました。
エリザベスシティーからは定期的な輸送手段はなく、キティホークまで乗せてくれる船を探すために何日もかかりました。町を歩く人に聞いても、当時キティホークという地名さえ知らない人がほとんどでした。やっとキティホークまで行く船をみつけましたが、それは小さな帆船でしかも漁船でした。海峡でその小船は嵐に遭い、船底には水が漏れて、水を汲みだしながら風雨の中を進んで行ったのです。途中、入り江に入って嵐のおさまるのをまたなければなりませんでした。キティホークに着いたのは夜の9時でした。食べる物もろくになく、その晩は船で夜を明かしたのでした。
以下の図がその旅程を示しています。成功するかどうかもわからない飛行機の実験のために、重い荷物をもって、6日間も費やして、誰も知らない遠い土地にやって来たのです。途中、今では想像出来ないような苦労もあったでしょう。努力なくして夢は実現しない物なんだなぁ、とあらためて感じさせるウィルバーの旅です。