12.ブランコ岬
作戦上、ブランコ岬が絶好の目印となった。
行きも帰りもこのブランコ岬にある灯台上を通過することにより、正確な位置と方位を把握することが出来る。帰りはブランコ灯台上空で、ここを基点として伊25とのランデブー地点へ変針すればよい。
往路はブランコ岬上空で南南東にベクトルをあわせた。いよいよ内陸部に侵入だ。高度2500メートルまで上昇し水平飛行に移った。それでも速度は180キロ。現在の新幹線に軽く負ける。と言うか、爆撃機としても遅すぎる。敵に見つかればひとたまりもない。しかも機体は木と布がふんだん使われている。近くによればピストルでも落とせる。そのくらい脆弱な機体だった。しかし無防備状態での偵察飛行には慣熟している二人のこと。敵の目をくらまして、目的を果たして無事帰還する自信は十分にあった。
一応後部席には取り外し式の7.7mm機銃があったが、これを使うときは絶体絶命の状態に近い。
「奥田兵曹、監視を慎重にたのむ」
「了解」
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